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「お…お待たせ…」 私は、肩で息をしながら玄関のドアを開けた。 「そんなに急がなくても良かったのに。急に来た俺が悪いんだし」 私は、頭をブンブンと振り弦太を見た。 すると、弦太は一瞬眉根を寄せ、手を伸ばすと私の瞼を指でなぞった。 「瞼腫れてる」 私の胸は早鐘を打ち、頬が熱くなっていくのを感じた。 「え!えっと…昨夜、夜更かししたからかな…」 こんなにも動揺する自分に疑問が湧く。 ふと弦太の顔を見ると、彼の頬も薄っすらと赤い。 でも…弦太は手を引こうとはしなかった。 弦太が触れた瞼は更に熱を持ったが、このまま触れていて欲しいと思った。 (そうか…私は弦太の事が好きなんだ…) 突然、頭に降って来た答えが私の胸にストンと落ちる。 私と弦太は暫く見つめ合っていた。 私を見る彼の目は、とても温かい。 どれくらい時間が経っただろうか… 弦太は私の瞼から手を引くと、照れ臭そうに言った。 「結衣…ちょっと歩かないか?」 「うん…良いよ」 私達は肩を並べ、毎朝歩くあの道を歩いた。 「実はさ、俺…不思議な夢を見たんだ」 「夢?」 「うん。結衣のお父さんだって言う人が夢に出て来た」 「え?お父さんが?」 私は、驚いて弦太を見上げた。 「うん。それで、その人は言ったんだ。結衣をお願いしますって」 弦太の言葉に私は思わず足を止めると、バッグからスマホを出し1枚の写真を見せた。 その写真は、私とお父さんの写真。 亡くなる前に撮った写真だった。 「夢に出て来た人って…この人?」 写真を見せると、驚きから弦太の目が大きく見開かれた。 「この人だよ!間違いない!」 「やっぱり…お父さんだ…」 お父さんは、私の前から消えた後に弦太の所に行ったに違いない。 「お父さん…」 私の目から涙が溢れ落ちた。 「お父さん…酷いこと言ってごめんなさい…」 涙が私の頬を伝う。 「結衣…泣くな…」 弦太の声に顔を上げると、再び彼の手が伸びて涙で濡れた頬を拭ってくれた。 「何があったのかは分からないけどさ、お父さんは、結衣のことを大切に思ってるんだよな」 私は、何度も頷いた。 その時、突然後ろから声が聞こえて来た。 「結衣、弦太君」 私達が振り返ると、そこにお父さんが立っていた。
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