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①
私は、この道が嫌いだ。
なぜなら…この道でお父さんは事故にあった。
私が5歳位の時、良く晴れた休日にお父さんと一緒に公園に向かってた。
この道は住宅街を通る道。
決して広くない。
人通りが多い為、車は徐行しながら走行してる。
でも、その時は違った。
突然、後方から猛スピードの車がやって来た。
お父さんは私を庇って…はねられた。
その後の記憶は…あまりない。
お母さんの話では私はショックのあまり、暫く話す事ができなかったらしい。
お父さんが亡くなってから、私はお母さんと支え合って生きてきた。
「はぁ〜また、この道を通るのか…」
私は暗い気持ちで、この道に立つ。
この道を通らないと駅には行けない。
「仕方がない…」
一歩踏み出した時、後ろから声が聞こえた。
「結衣、おはよ〜」
振り返ると、幼馴染の弦太が立っていた。
弦太は小学校の時に、近所に引越してきた。
泣き虫で、いじめられて良く泣いてた。
なんだか放っておけなくて、私はいじめっ子から弦太を庇っていた。
そこから仲良くなって、腐れ縁で今も同じ高校に通っている。
「あれ?弦太、最近早いね〜いつも一本遅い電車に乗るじゃん」
「うん…生活改めようと思ってさ〜」
「まぁ…いつも遅刻ギリギリだったもんね〜」
「そうそう。さすがにヤバいかな〜って思ってさ」
「良い心がけじゃん」
「だろ〜?」
私達は、他愛もない話をしながら駅まで歩いた。
不思議と弦太と話していると、あの嫌な道も気にせず歩ける。
朝が弱い弦太が、最近は私と同じ電車に乗る事が増えている。
そのおかげで、私は朝から暗い気持ちにならずに済んでいた。
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