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私の先輩はコミュニケーションが苦手で、無愛想で高圧的だけど、本当は凄く優しくて繊細な人だ。初めて彼女が私に優しく接してくれた瞬間、そのギャップに心を奪われた。時々見せる黒い一面や圧倒的な強さも含めて、私は彼女のすべてを好きだ。そんな彼女が、私が隣に立つことを許してくれている。ここで断ったら、この関係は終わりを迎えるかもしれない、そんな気がした。だから私は…
次の日、美雷と麗奈は一緒に出勤する。その道中、麗奈が口を開く。「美雷、私ね、決めたよ。あなたの話を受けることにしたの。これからもよろしくね?」麗奈の決意が込められた言葉に、美雷は驚きの表情を浮かべた。歩道を歩く足音が響く中、彼女の目には期待と不安が入り混じっている。美雷は言葉を失い、一瞬立ち止まった。
「ず、随分決めるのが早いんだな。もっとゆっくり考えた方がいい、結構面倒なこともお!?」麗奈は美雷の口に人差し指を当てて、黙らせる。「もう決めたことなんだから、それ以上は何も言わないで。私、意外と頑固だからね、一度決めたら曲げないよ」不敵に笑う麗奈。
久しぶりの出勤は何時もより遅く、会社に着いたのは8時過ぎ。更衣室にいる美雷達を見かけた穂乃果が声をかけてくる。、「おはよう、黒野、守光。この時間にいるのは珍しいな。久しぶりに見たが元気そうで何よりだ。あ、そうだ、黒野、出張の報告書、ちゃんと忘れずに提出しておくんだぞ。それと、来月から支社から3人が転勤してくるらしいんだが、役員たちが黒野に任せたいって言ってたぞ」と、穂乃果は軽く伝えた。
穂乃果は美雷の肩をぽんぽんと叩き、「まぁそう嫌そうな顔をするな、これも仕事だ」と言い、更衣室から出ていった。
美雷は、穂乃果の言葉を受けて、思わず顔をしかめる。「なんで私が…麗奈の指導もしないといけないのに…」と、ふうっと息を吐きながら愚痴をこぼす。しかし、彼女はすぐにその愚痴を飲み込む。一部の役員や、会長、社長といった上層部の人物は、美雷がステリライズに所属していることを知っており、時には滅菌関係で融通を利かせてもらっているからだ。
メディカンに入社することになったのも、彼女自身の意志ではなく、ある意味では半ば強制的なものであった。本来、彼女は社会人になる必要はなかった。ステリライズの隊員として、十分な能力を有していたからだ。しかし、白神の指示で、「人間性を高め、腐った性根を叩き直してこい」という理由で、社会経験を積むことが求められたのだ。ただし、一年が経過した今でも人間性は改善はされていない…
むしろ悪化していた。
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