4人が本棚に入れています
本棚に追加
最終日を迎えた美雷は、毎朝のルーティンを終え、通信室に戻った。そこで胡桃に話しかける。「1週間お疲れ、胡桃。もう少し経験を積んだら、私のところに来なさい。ちゃんとしたサポーターが欲しかったところだから。」この1週間で、二人は名前を呼び合うほど打ち解けていた。
「お疲れ様です!わ、私のような若輩者が美雷先輩のサポートなんて、できるわけないですよぉ…いたっ!?」美雷は弱気な胡桃の額を拳で小突き、詰め寄った。「少なくとも今日は完璧な指示だった。それに、これは命令だから拒否は許さない。いいわね?」美雷の威圧に耐えきれなくなった胡桃は、「はい」と答えてしまった。呆然としながら、彼女は去っていく美雷の後ろ姿を見送った。その後、姫柊に事情を説明したが、彼女からは「一度言ったことは突き通すから、諦めて従うしかない」と言われ、心が折れてしまった。胡桃が美雷のサポーターになるのは、もう少し先の話。
部屋に戻った胡桃は、いつものように姫華に化粧を施され、二人は訓練室へ向かった。9時になり、戦闘部隊は外での訓練を開始する。しかし、問題が発生した。病魔の姿がほとんど見当たらないのだ。
この時期はエンテロとアデノという病魔が大量発生するはずだが、この日は全くと言っていいほど確認できなかった。それでも、突然の発生に備えて、隊員たちは巡回を始める。緊張感が漂う中、彼らは周囲を警戒しながら進んでいった。
美雷は何か嫌な予感を感じており、常に警戒態勢をとっていた。この日は日曜日で、一通りも多く、街は喧騒に包まれていた。人々の楽しげな声や笑い声が響く中、彼女だけがその裏に潜む不安を感じていた。そして嫌な予感は的中する。
通信部の胡桃から緊急連絡が入った。「大阪府浪速区新世界で、ディジーズかそれ以上の個体が発生しました!現場に隊長は急行してください、」美雷は一緒に行動していた隊員に民間人の避難を指示し、自ら現場へ向かう決意を固めた。
色の力を使い、光の速度で移動した美雷は、一瞬で現場に到着した。新世界は阿鼻叫喚と大混乱に包まれていた。病魔の攻撃を受けた隊員たちは何らかの感染症に苦しみ、痛みに呻いている。そして美雷は出会う。
美雷の目の前には、両親を殺害した人型の病魔が隊員の首を絞めて立っていた。彼女の胸の内には、怒りと悲しみが渦巻き、どす黒い感情に飲み込まれる。美雷はその感情に押されるように我を忘れ、病魔に斬りかかる。だが、病魔は冷静に美雷の攻撃を躱し、素早く腹部に鋭い蹴りを炸裂させた。美雷は驚きと痛みを感じながら近くの店に蹴り飛ばされ、店舗の床に転がり込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!