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二人は装備を整えた後、通信による誘導で中央区へと向かう。周囲の警戒を怠らず、目的地に近づくにつれて緊張感が高まっていく。通信によると中央区では現在シックネスが四件、イルネスが一件の計五件の病魔が出現しているという。
麗奈はその情報を聞き、さらに緊張感が増す。シックネスは感染力が高く、早急な対応が求められる一方、イルネスはより危険な症状を引き起こす可能性がある。
他の民間企業も応戦しているとのことだが、一般人の保護は遅れ、イルネスによる感染症の拡大が始まっていた。混乱が広がる中央区では、感染者が急増し、街の人々は恐怖におののいている。
「おま……麗奈」麗奈の圧を感じ美雷は名前を呼ぶ。「一般人の保護を優先に動け。病魔は私が引き受ける、そして余裕があればよく見ておくといい。本当の私を。黒野美雷、滅菌開始します」と美雷は毅然と宣言した。
美雷が抜刀したと同時に、雷が落ちた時の音と衝撃が大地を揺らす。彼女の姿はなく、少し遠い場所で稲妻を目視することが出来た。
麗奈は周囲を警戒しながら、一般人を避難させるために指示を出した。人々は彼女の声に従い、混乱することなく避難を始めた。しかし、病魔の影は見当たらず、彼女は一瞬ホッとしたものの、不安が胸に残った。果たして本当に危険は去ったのか、それとも油断は禁物なのか。彼女は目を光らせ、周囲の状況を注意深く見守った。遠くで別の滅菌者の声が聞こえてくる、声は緊迫感に満ち、何か重要な情報を伝えているようだった。
「おい!あれ黒野じゃないか!?しかも隊服着てるぞ!病魔は放っておけ、黒野が全部滅する!俺達は一般人の保護だ!」その人達は稲妻の見えた方面へ走っていく。
麗奈は近くにいる別の滅菌者に駆け寄り、状況を尋ねた。「どうして皆、ここで避難誘導をしないんですか?病魔が迫っているのに!」
その人は不思議そうに麗奈を見て「新人ね!知らないのも無理ないわね。私達滅菌者の間では隊服を装着している黒野が現れた時は、全員で援護をすることになっているの。まぁ黒野の攻撃の被害から一般人を守るだけなんだけどね」
麗奈はその瞬間、全てが腑に落ちた。美雷が言っていた一般人の保護とは、病魔からの攻撃を防ぐことではなく、黒野の引き起こす人災から身を守るためだということを理解した。
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