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麗奈が美雷の近くまで来ると、通信が入る。「シックネス四体消滅、残りはイルネスのみ。健闘を祈る。」麗奈は、美雷が数分でシックネス四体を滅菌したその速さに驚愕しつつ、周囲の被害の酷さに気がついた。壊れた建物や地面には傷跡が残っている。戦闘の痕跡が明らかに彼女の目に映った。
再び雷が炸裂し、美雷が道路へと降り立つ。その姿は威風堂々としており、彼女の目の前には全長十メートルほどの巨大なゼリー状のイルネスが蠢いていた。イルネスは不気味に揺れながら、周囲に感染症を撒き散らしている。
美雷の姿を見た近くの高校生や小学生が目を輝かせ「すげぇ!黒き戦乙女・黒野美雷だ!」と騒ぐ。美雷は学生たちの間で絶大な人気を誇り、その戦闘シーンが動画サイトにアップされると、必ずバズるほどだった。彼女の勇姿は多くの人々にとって憧れの的であり、周囲の興奮はその影響を色濃く表していた。学生の期待に応えるかのように、美雷は刀を天に掲げる。周りの視線が全て美雷に向けられる。麗奈はこの光景を見るのは二回目であった。「これほどの力を発揮すれば、周りにどれほどの被害が出るのだろうか?」周囲の木々や建物が心配でたまらなかった。
美雷の動きを察知した滅菌者たちは、瞬時に行動に移った。各々の色を駆使し、周囲の建物や一般人を保護するために奔走する。彼らはそれぞれの能力を最大限に活かし、周囲に防護壁を展開していく。
一人の滅菌者が氷塊を創成し、周囲の空気を冷却することで、影響を最小限に抑える。緑色の力を持つ者は植物を操り、障害物を作り出して人々を守る。
そんな時、麗奈は真っ直ぐ美雷の背を見つめた。彼女の姿は圧倒的な存在感を放ち、まるで周囲の空気さえも変えてしまうようだった。学生たちのボルテージも上がり、期待と興奮が渦巻いている。
「来るぞ来るぞ!絶対にあれが来る!」
天に掲げられていた刀が「消え失せろ……雷霆」という言葉と共に振り下ろされると、空がひときわ暗くなり、凄まじい雷光が放たれた。十メートルのイルネスを飲み込むほどの巨大な雷の柱が降り注ぎ、周囲は衝撃波に包まれた。
滅菌者らが作り上げた防御策も、衝撃波によって全て吹き飛ばされてしまった。麗奈はその衝撃に耐えきれず、後方へと吹っ飛ばされる。地面に叩きつけられ、視界が揺れる中、彼女は必死に前を向いた。
本当に前見たあれは手加減していたのだと、麗奈は思った。これがSランク滅菌者の本当の力、レベルが違いすぎる。美雷の一振りがもたらした圧倒的な威力に少し絶望したのであった。
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