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周囲から悲鳴が上がり始め、窓ガラスが割れる音や、爆発音が混じり合い、混沌が訪れる。
その時、通信が入り、焦燥感を煽る声が耳に届く。「イルネスクラスが大阪各地に多数出現した」という連絡だった。
「心地よい心地よい、あぁその顔良いなぁ。だが今はここまでだ、また相見える日を楽しみに待つとしよう」病魔が後退するのを見た美雷と千樹は逃がすものかと、とどめを刺しに向かうが突如として現れたもう一体の全身真っ青な人型病魔に、行く手を阻まれてしまう。「黒野美雷、この先に行きたかったら、オレを倒してから行きな!」名前を呼ばれたことに、美雷は動揺を隠せず、その動きが一瞬停止する。千樹もまたイレギュラーな状況に少し戸惑ったが、歴戦の経験を経ている彼女は、すぐに攻撃対象を変え、行く手を阻む人型病魔を斬りつけた。
病魔はひらりと躱し、一定の距離をとる。美雷は冷静さを取り戻し、目の前の敵に集中する。親の仇を今すぐにでも取りたい気持ちは胸の奥底に封印し、新たなる病魔を滅菌することを心に決めた。
美雷と千樹は視線を交わし、息を合わせて病魔に攻撃を開始する。千樹が樹の根で相手の動きを鈍らせ、美雷が根ごと全てを破壊した。「やっぱり力があっても、お前達の相手はしんどいなぁ…見せるのはもう少し楽しんでからと思ったが、仕方ない…おえぇ」と病魔は口を大きく開き、腹の中から何かを取り出した。それは折りたたまれた大鎌であった。
千樹は「あれは…滅器!?」と驚きの声を上げる。禍々しい形をしているが、それは正真正銘の滅器であった。「なんでお前がそれを持っている!」と言いながら美雷は大鎌を使わせてはいけないと本能的に察し、病魔に雷撃をくらわせる。バリバリという音が戦場に響くが、病魔はその攻撃を大鎌で防いでいた。「焦るなよぉ、黒野美雷!」大鎌による攻撃が美雷を襲う。攻撃を刀で受け止めるも、とてつもない力に押し戻され、横に吹っ飛ばされてしまう。
「黒野美雷、もう理解しているんだろう?このオレが滅器を使える理由をよぉ?」美雷は全てを理解していた。両親の仇のあいつも、今目の前にいるこいつも元は人間、それも滅菌者であることを。両親は病魔に殺されたのではなく、人間に殺されたのだ。美雷の全身から黒い雷が迸る。「お前達は存在してはいけない。絶対にここで滅菌してやる!」と、その時、緊急通信が入る。
「黒野美雷及び千樹梅子、焔坂煉、朝緑姫華、青白磁空、5名の神装許可が受諾されました!」
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