対病魔戦

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この許可は、美雷にとって全力を出すことを許されたということでもあった。彼女は常に物を壊しすぎるため、全力を出すことを禁じられていた。特に、この人口密集地帯である大阪市内での戦闘では、神経を尖らせて戦わざるを得なかった。しかし、もはや小細工は必要ない。 美雷は静かに刀を鞘に納め、言った。「お前がどうやって病魔になったのか、そして何故私の邪魔をするために病魔になったのか、もうどうだっていい。ここからは本気のゴミ掃除の時間だ。迸れ、建御雷(タケミカヅチ)!!」 再び刀を抜いた美雷は、色の力を爆発的に解放し、全身に雷の鎧をまとい、手には雷刀を携えて病魔に立ち向かった。神装を纏った者には、神の如き力が与えられるのだ。 病魔もさすがに怯む。「神装は話が違う…一旦引くか」そう呟くと、病魔は後退りを始め、大鎌をこちらに投げつけた後、全力で逃げ出した。逃げる方向は、大阪市内の中心地、人の多い方へ向かっている。美雷は、それが自分にとって手出しできない状況を生むことを理解した。しかし、そう簡単には逃さない。美雷は瞬時に大鎌を躱し、病魔の退路を断った。そして、放った。「消し飛べ、神雷霆!」 眩い雷の柱が病魔を飲み込み、周囲の建物もろとも塵に変えていった。とてつもない衝撃に近くにいた千樹も吹っ飛ばされそうになるが、咄嗟に刀を地面に刺し、根を張り巡らせて回避した。 その雷霆は、煉達のもとにも轟いていた。「美雷…応援、要らねぇじゃねぇか。まぁいいか、こっちもイルネスがこんなにいるんじゃ、行けそうにねぇしな」煉は複数現れたイルネスに足止めを食らっていた。彼は近くにいた隊員たちに、「お前らは全員退避しろ!」と命令する。「しかし!」と反論しようとする隊員に対し、「大火傷する前にさっさと行け!」と強い口調で言い放った。隊員たちは渋々その場を離れていった。 「ったく、俺だって美雷と同じ隊長なんだから、少しくらい信頼しろよ」煉は、敵に向かって意気込む。「さてと、てめえら、覚悟しろよ?今の俺は激熱だぜ!燃え滾れ、火之迦具土神(ひのかぐつち)!」 その瞬間、煉の全身に炎の鎧が顕現し、彼の周囲が赤く染まった。熱に弱い病魔にとって、赤系統はまさに天敵である。赤系統を持つ一族の中でも、焔坂家はその頂点に君臨していた。「楽しい楽しい滅菌の時間だ、神紅炎!」 大地から無数の火柱が立ち上り、イルネスを容赦なく滅菌していく。その熱は、ありとあらゆるものを溶かし、自動車や木々が次々と炎上していった。周囲はまるで地獄のような光景と化した。
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