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美雷の反応は驚異的だった。白く発光した雷十の大剣が振り下ろされた瞬間、彼女は一瞬でその軌道を読み取り、軽やかに身を躱す。雷十の力強い一撃が空を切り床に振り下ろされる。すかさず彼女は瑞葉に向かって突進し、腰の刀を少し抜き「雷撃」と静かに呟く。刹那、周囲にバリバリという音が響き渡り、瑞葉は雷の力に押し込まれるようにして壁に激突した。そしてそのまま意識を失う。
「加減したけど怒られるか……さて、これで一体一だ」
麗奈は、美雷の凛とした姿勢に圧倒されていた。彼女の瞳はまるで静かな湖のように深く、無駄な動きがない。その集中力は、まるで子供と遊ぶ大人のように、余裕を持っているかのようだった。麗奈は思わず息を呑む。対峙する中で、美雷の存在感は一層際立ち、麗奈の心に緊張と興奮をもたらしていた。麗奈は心の中で葛藤していた。自分も白でありながら、何も出来ないことに歯痒さを感じていた。
模擬戦になると自分の消極的な性格が災いし、何もできなくなることに悩んでいた。周囲からは「宝の持ち腐れ」と何度も言われ、自分の力を活かせないもどかしさが胸を締め付ける。
「でも私は今日から変わるって決めたんだ!」麗奈は自分に言い聞かせるように叫び、雷十に向けて光線を放った。しかし、その光線はあまりにも弱々しく、雷十は軽々と防いでしまった。
それどころか標的にされてしまった。雷十の大剣が麗奈に振り下ろされそうになったその時。
「本当にバカ、私に背を見せるってことは死を意味するんだよ。雷鳴」
美雷は一瞬の隙をついて雷十の背後に現れ、静かに耳元で指を弾いた。零距離から響く雷音は、雷十の耳を破壊し、彼は驚愕の表情を浮かべて白目を剥いた。次の瞬間、雷十はぐったりと横たわっていた。
シンと静まり返る模擬戦室、呆気に取られていた審判は、慌てたように美雷達の勝利を宣言する。
美雷は麗奈の横を通り過ぎ、模擬戦室を離れようとした。しかし後ろから雷十の叫び声が響き渡り、模擬戦室の空気が一瞬にして緊張感に包まれた。
「まだ終わってねぇだろ!女のくせに生意気なんだよ!!」雷十の声が震えていた。彼は自分の感情を抑えきれず、美雷に殴り掛かる。その時、麗奈が盾を構え、美雷の前に立ちはだかった。鈍い音が室内に響く中、彼女の表情は緊張感に満ちていた。美雷は驚く様子もなく、麗奈に「よくやった」と言って雷十に向き合う。
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