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仲間と過去
美雷は麗奈の手に触れ、少しだけその温もりを感じ取ると、言葉を選ぶように少し間を置いた。「実は…最近、ちょっとしたことがあって、君に伝えておきたかったんだ」そう言いながら、真剣な目で麗奈を見つめた。音信不通の件で美雷に不信感を抱いていた、麗奈は少し警戒した表情で身構える。「別にいいけど、また出張があるとかはなしだからね」麗奈は美雷の手にソッと手を重ね、上目遣いで美雷を見る。
「分かってるって…で、本題に入るんだがその前に確認することがある。これから話すことを了承したら、麗奈を危険に晒すことになる。それでも私の話を聞くか?もちろん、聞きたくなければそれでいい。どうしたい?」
美雷は麗奈の言葉を聞くと、ほんの少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐにその表情を引き締め、深く頷いた。「覚悟はもうできてるよ」そう言うと、彼女は再び美雷を見つめ直す。彼女の瞳には、少しの不安とともに、決意の色が宿っていた。
美雷は、麗奈にステリライズという国の機関に所属していること、出張の件、推薦の件の全てを話した。話を終えた美雷は言う。「この件の返事はゆっくりでいい、そうだな…1週間位猶予があるから考えて欲しい。君の人生に関わる大切なことだから、私も無理強いはしない、嫌ならそれ以上は何も言わないから安心して欲しい」麗奈は少しの間、美雷の真剣な表情に見惚れながら、心の中で様々な思いが交錯する。やがてそっと頷くと、席を立ち、静かに部屋を後にした。その背中には迷いも感じられたが、同時に決意も見え隠れしていた。
麗奈は部屋に戻ると、しばらくの間、ぼんやりと窓の外を見つめていた。頭の中で美雷の言葉がぐるぐると回り、心の中で整理がつかない。彼女はこれまで、美雷の強さや過去、そして今の状況をよく知っていた。美雷が語ったことが嘘ではないことは、すぐに理解できた。けれど、だからこそその重さに圧倒されてしまう。
麗奈は、机に座りながら自分の過去を振り返る。大学で学び、メディカンに入社した理由はただ一つ、人を助ける仕事がしたいという純粋な気持ちだった。しかし、今、自分がメディカンに配属されている場所が、本当にその希望通りの場所だったのかと言われると、答えは曖昧だった。彼女は深呼吸をして、自分の気持ちを整理する。どんな道を選ぶにしても、人を助けるという原点は忘れたくない。
さらに、これから進もうとしている道も修羅の道かもしれない。それでも人を助けるということに変わりは無い。
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