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美雷たちは、混乱の中で逃げるようにその場を離れたが、外に出ようとすると大勢の役員や社員に囲まれてしまった。視線が一斉に集まり、緊迫した空気が漂った。そして現在進行形で社長達にお灸を据えられていた。麗奈は心の中で「クビだけは嫌!」と叫んでいた。
「またやってくれたねぇ、黒野君。」社長が苦笑いを浮かべながら美雷を見据えた。「君が暴れたあとの後始末はすごく大変なんだからねぇ。はぁ……」
「私に喧嘩を売ったのが悪いし、皆さんは侮辱されて黙っていられますか?ああいうバカには痛い目を見させた方がいいんです」
社長がクビを宣告できない理由は、美雷の強さに起因していた。Sランクの保持者が所属する会社は数が少なく貴重な戦力なのだ。その圧倒的な力は、組織にとって欠かせないものであり、彼女の存在が社長にとっての大きな重荷であると同時に、絶対的な防波堤でもあったのだ。この情報は社長や役員だけが知る極秘事項であり、漏洩すれば会社の存続すら危うくなる。美雷の背後には、強力な機関が控えているが、その詳細を明かすのはもう少し先の話。
「話はこれ以上ないようなので、これから私の仕事をしてきます。もちろん部下と一緒に」
社長は、今回の罰として部下と共に成果を残すことを条件に、2人を解放した。麗奈は胸を撫で下ろし、美雷の後ろをついて行った。美雷は一切の迷いなく、滅菌者専用設備室へと向かう。ここには滅器や無線、隊服が常備されている。美雷は麗奈に必要なものを指示した。麗奈は、指定された隊服を手に取り、サイズの合うものに着替える。美雷は無線の調整を行う。美雷はぶっきらぼうに言う。
「今から外に出て、病魔滅菌作業を行う。お前は民間人の保護と私のサポートを担当しろ」
「お前じゃないです」
麗奈は「お前」と呼ばれたことに少し気を悪くし、思わず言い返した。「私は麗奈です。そんな言い方しなくてもいいでしょ」その反応に美雷は驚きつつ麗奈に詰め寄る。「意外と強気なとこもあるんだな」と言い、無線を放る。
麗奈は美雷の隊服姿を見て、思わず息を呑んだ。ポニーテールの髪が揺れ、黒いマスクが神秘的な雰囲気を醸し出している。動きやすさを追求したパンツスタイルは、彼女のスタイルを一層引き立て、まるで病魔と戦うために生まれたかのようだった。麗奈はその姿に惹きつけられ、目が離せなくなった。
美雷は腰に漆黒の鞘に収められた刀を装備している。その刀は光を吸い込むような深い黒であった。
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