ご近所カプリッチョ

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 受験にあたって、慎弥は漠然とした憧れから進学先を京都の大学にした。  生まれも育ちも東京で、シンヤの周囲の友人達もそのまま当たり前に首都圏の大学を志望していたが、なんとなくそれは避けたかったのだ。某小説群の影響はあるせよ、中二病の名残ではない、と本人は厳しく思っている。  一人暮らしへの憧れもあった。間違いなく。  そして運良く合格の運びとなり、シンヤは憧れの街、京都で学生ライフを送ることになったのだが。  初めての一人暮らしだし、しかも馴染みのない地方だ。  親の強い勧めで、市街地の大学近くではなく、中心部からは離れた地区に住む遠い親戚宅の近くの下宿があてがわれた。たまり場にならないのはありがたかったが、同級生やサークルの友人たちと遊ぶ時には不便で閉口した。  そもそも、東京と違って電車の時間も早い。あっという間に主要な交通手段は自転車に、小金が貯まったあとは原チャになった。  それも、この街らしいといえばらしいかもしれなかった。
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