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どうにかして撒こうと路地裏に入ったりしてみるも。
「……さっきのとこまで戻ってこれたけど追い詰められちゃったよ」
まるで最初からあったような土壁に阻まれ見事なまでに逃走経路が潰されており、辞世の句を読む間を与えることなく振るわれた銀色の刃が俺の頬を掠る。
そして、同刻。カチッという音が響き渡った。
※ ※ ※
風景が切り替わる。さっきまで長屋があった場所には、見慣れた現代建築の家。月極駐車場には数台のワンボックスカー。
「も、戻ってこれた!」
白雪はそう叫ぶとへたり込んだ。丁度誰もいなかったからいいが、はたから見たら変人だと思う。
「もう死ぬかと思った……って星宮ほっぺ裂けてる」
鰄はそういうや否や傷口を洗い流し、絆創膏を貼ってきた。
「やべぇ、頬は痛えし冷や汗もやばい。特に汗でシャツがベタベタして気持ち悪すぎる」
「……本当にごめん! 星宮に至っては怪我させちゃってごめんなさい」
息も絶え絶えにそう謝る白雪に鰄はデコピン、俺は拳骨をそれぞれ入れた。
「まあ、あれは死角だったし仕方ないだろ。それより早く帰ろうぜ」
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