ミリしら脱出ゲーム〜東海道川崎宿迷子紀〜

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「やっぱこの写真が何かを狂わせにきてるのは間違いないな」  絵画に疎い俺にはどの要素が効果を持っているのか皆目見当がつかないが、少なくともこの写真型浮世絵は認知処理のプロセスに介入し強制的に没入させているのは確実だ。  実際、この写真から目を離すと何ともないが、ほんの数秒見ただけで再び飢餓状態に陥った。……とはいえだ。 《まあ、見ない限り害は無さそうだし。放置でいいんじゃないか?》  そうメッセージを送ると、俺はスマホを脱衣所に放り投げた。 ※ ※ ※  翌朝ラインを見ると写真は無く、その代わりにあったのは二人からの《なんか勝手に写真が消えてるんだけど》というメッセージ。  画面越しに間抜けヅラを想像した後、ふとアプリストアを見ると二人の言う通り『ミリしら脱出ゲーム』なんてアプリはどこにも無い。  ただ頬に残った傷痕と疼くような痛みだけが俺に夢では無かったことを訴え続けた。
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