火の鳥

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火の鳥

この作品をジャンル分けすることなど、私には到底できない。歴史物であり、SFであり、ファンタジーでありながらも、恋愛要素やヒューマンドラマもあり、あらゆるジャンルを包括する漫画だ。手塚治虫の一番の代表作と言ってもいい超大作漫画、それが火の鳥だ。 歴史物、という視点で見れば、邪馬台国に羽衣物語、平氏の没落など、手塚治虫の独自の見解も取り入れながら、リアルに歴史上の人物を描いている。そして、SFという視点で見れば、ロボットにAI、宇宙旅行やクローンなど、何十年たった今でも、未来を予見するその力には、畏敬の念をはらってしまう。人間のエゴ、権力、果てなき欲望、切ない恋心、あらゆるテーマがあらゆる切口で描かれるこの漫画は、連作という形をとられていても、決して飽きることはない。 この作品を語るのは難しい。説明を始めれば、百ページあっても足りないだろう。一つだけこの作品を語るとするなら、スケールの大きさだ。スケールが大きいと言われる作品は、世にたくさんあるだろう。しかし、火の鳥に匹敵する作品は、ない。火の鳥は、地球だけでなく、あらゆる星にまで存在し、過去、現在、未来、あらゆる時代を超越している。一つ一つの生命から、宇宙の果てまで詳細に描いた作品に、時空の感覚は失われてしまう。 この作品を読んだ人は、自分がいかにちっぽけで、愚かな存在で、そして、何よりもかけがえのない命を持っていることに気づくだろう。私は何十年も生きてきて、この作品を超えるものに出会ったことがない。きっと、火の鳥が漫画の頂点だと思っている人間は、私だけではないはずだ。
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