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「そう言ってもらえると有り難いけど」
幸枝から勧められた物件をいくつか見に行く事になった。駅から徒歩十五分程度のワンルームマンションだ。店を出ると駅で会った女性が物件情報を眺めていた。
「あら、あなた」
「面接いかがでしたか?」
「やれる事はやって来たけど、どうかな」
「ご縁があると良いですね」
「……というか、あなたは何してるの?」
後ろで幸枝が「尋問二回目ね」と笑った。
お互い自己紹介をした上で事情を話したら、「遙さんって人が良いっていうか、世話好き?」と面白がって何故か内覧にもついて来た。
「収納がもう少し欲しいわね」
「志穂さんの方が細かく見てるわね」
クローゼットを開けて自前のメジャーを使って測る志穂をまるで面接官の様に見つめていた。
「すごい数」
ベランダに出ると、遠くで鳥の群れが見えた。
「ムクドリね」
「追っ払ったりしないんですか?」
嫌いな音を流す事で、糞害対策している自治体があると聞いた事がある。
「実はね、近隣で追っ払ったムクドリが流れ着いたんじゃないかって話なのよ」
「えっ」
「同じ様に私達が追っ払ったら、今度は別の街で糞害が起きるかもしれないわね」
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