落とし物には気を付けて

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「大量の猫の餌を持て余した誰かが、一石二鳥を狙ったのかもしれないわね」  幸枝には犯人が誰なのか分かっている様だった。    後日、改めて相川不動産に出向くと、驚いた事に志穂がお茶を持って出てきた。 「ここに就職する事になったの」  志穂は前職も不動産会社だったらしい。 「ノルマとか人間関係とか面倒で辞めたんだけど、やっぱり人と関わる事が好きだって気づいたの」  あの日、すっ転んだおかげねと笑った。 「幸枝さんは?」 「例の件を話してる」  応接室のドアが開き、田中と藤野が出てきた。 「あ、工藤さん」 「田中さん、普段着もその服なんですね」 「いいだろ」  地域猫サクラの顔が大きくプリントされたTシャツを着てにっと笑った。さすがに藤野は着ていなかった。 「帰ろう、藤野さん」  ビクビクしながら、藤野は田中にひっついて出て行った。 「怖い顔なんだから。あんなに脅す事ないのに」 「元からこういう顔なんだ。じゃあ、また明日」  続いて高橋が帰って行った。元教師らしく厳しさと愛情を持って指導をしたのだろう。 「志穂さん、悪いけど私にもお茶くれる? あー、くたびれた」
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