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「じゃあ、はじめるか。幸枝さん、ゴミ袋を配ってくれ」
「はいはい。ちょっとごめんなさいね」
幸枝と呼ばれた相川不動産の女性は、このボランティア団体のリーダー的な存在らしい。皆が幸枝と一言二言話してから作業に入った。
「あの、私にもゴミ袋もらえますか?」
「えっ、いいの? 助かるけど、服が汚れちゃうかもよ」
「いいんです。やらせて下さい。もしかして住む事になるかもしれないし」
それに、この人達から街の様子を聞けるかもしれない。
「そう? じゃ、よろしくお願いします」
幸枝が清掃用具とゴミ袋を渡してくれた。幸枝と一緒に生垣の下の空き缶やプラスチックゴミ、猫の餌の残りを集めていく。
「部屋を探してるって、いつ引っ越し予定なの?」
「一か月後です。ルームシェアしてた友人と別々に住む事になって」
三ヶ月前から暇を見つけて探していたが、決め手に欠けて契約には至らなかった。
「じゃあ、清掃なんてしてる場合じゃないでしょ」
「そうなんですけど……あの、猫の餌、異常に多くないですか?」
「え?」
皆が集めて来たゴミ袋を見ると、空の缶詰や固形状の餌が多い。
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