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「おかしいわね。以前は野良猫が多かったけど、ボランティアの人達と協力して保護したり去勢手術をしてずいぶんと野良猫の数は減ったのよ」
「だとしたら、こんなに餌は必要無いですよね」
缶の数を数えると十個程ある。
「SNSを見て野良猫に餌をやりに近隣からやって来る人もいるのよね。でも、こんなに沢山だとカラスが集まって来ちゃう」
幸枝がため息をつく。
「……もしかして嫌がらせですかね」
「え? 嫌がらせって田中君、それは無いわよ」
田中がゴミを拾う手を止め、こちらを見た。
「そうでしょうか。清掃活動してたら色んな人に会うじゃないですか」
「そうなんですか?」
黙る幸枝を見ると、初老男性がゴミ袋を持って近づいて来た。
「ゴミのポイ捨てを注意したら悪態つかれるなんてよくある事だ」
初老男性がため息混じりに言った。
「あんた、帰らなかったのか」
「え? あ、はい。この後、幸枝さんのお店に伺おうかと」
「何だ、家探しは本当なんだな」
にやりと笑う。
「高橋さんは強面だけど、元小学校の先生なのよ」
「大昔な。幸枝さん、強面は余計だ」
幸枝はぺろっと舌を出した。
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