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告げ口の様で気が引けたが、その女性の話をすると、幸枝がまた深いため息をついた。
「伊藤さんの事ね。何度も注意してるんだけど、土の上にさせて埋めてるから良いでしょって」
スコップを持っている雰囲気は無かった。その場を取り繕う為にそう言ったのかもしれない。話の通じない相手を説得するのは難しいだろう。
「伊藤さんは極度の猫アレルギーでしたよね」
「田中君は彼女の仕業だって思ってるの?」
田中と一緒に作業していた女性が驚いた様に言った。
「その可能性はあると思っただけだよ。藤野さんだって、良いイメージはないだろ?」
田中は眼鏡についた汗をTシャツの裾で拭った。
「だが、あの人がわざわざ嫌がらせの為にお金を使うだろうか」
「そうね、ちょっと考えにくいわよね。とても慎ましく生活されてる方だし」
幸枝の言葉に周りから失笑が漏れた。
「伊藤さん、ゴミ拾いしてると凄い目で睨んで来るんです。正直、あの人怖いです」
藤野と呼ばれた女性が怯えた様に言った。
「一度、話してみるか」
皆の中では伊藤が犯人の可能性が高いという考えなのだろうか。
「っていうか、君。混ざってたのか」
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