落とし物には気を付けて

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 田中が私に気づいて目を瞬かせた。 「お邪魔してます」 「いや、邪魔じゃないし、むしろ感心しているんだ。君はえーと」 「そういえば名乗ってませんでした。私、工藤遙といいます」 「どうも。こちらは藤野さん。僕は近くの書店で働いてる。彼女は同じビルの100円ショップで働いていて——そういえば、今日は休みなの?」 「うん、このあと用があって——」  田中にそう答えると私の方に向いて、控えめに微笑んだ。 「藤野です。田中君から誘われて少し前から参加してます」 「猫はお好きなんですか?」 「えっ」 「そのTシャツ、好きじゃなきゃ着ないでしょう」 「あっ。これは田中君にもらって。でも、猫好きですよ。可愛いですよね」  最後のセリフは取ってつけた様に聞こえた。好きなのは田中の方なのかもしれない。田中は当然とばかりに鼻を膨らませている。 「お二人こそボランティア活動されていて偉いですね」 「田中さんは凄いなって。私はまだ参加してから一ヶ月くらいですし、来れない事も多いですから」  藤野は恐縮しきりだった。それから一時間程経った頃、駅前のゴミを拾っていた私の元に幸枝がやって来た。
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