綺麗な夢、の裏はいつだってもどかしい

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 慌ただしく家を出て、駅までふたりで歩く。波鶴ちゃん、体格の割にかなり早足だよね。おれがペースを合わせなくていいし、むしろおれの方がちょっと置いていかれそうなくらい。そういうのも、なんか特別ないい男って思っちゃう。  波鶴ちゃんの空いてる手をぱっと握る。ちょっと目を見開いてから、悪戯っぽい目で笑ってくれる。手を繋いだまま地下鉄の駅を下って、路線は別だからそこで解散した。  告白すれば。付き合いたいって言っちゃえば……。  なんか「ピンとこない」のよ。今じゃない気がする。でもそれ、ほんとに正しい直感なのかな。単にビビってるだけだったりして。  あと2回会う約束はしてる。昨日が1回目として、3回目のデートは波鶴ちゃんのお誕生日祝い。別にそこでいいんじゃない?  ……えっちしちゃったのがさ。おれはこんなにマジだけど、波鶴ちゃんはえっちしたいだけだったりして。えっちなしで会いたい、とか、おれたちってどういう関係になれるの、とか、聞く、べき……なのかな〜……??  いつも以上の、肺が潰される満員電車。ちょっとでも長く一緒にいたくて、ギリギリに家を出ちゃったおれがバカでした。タクシー代出してあげればよかった。普段は波鶴ちゃん徒歩通勤っぽいのに。  痴漢されてたらどうしよう。波鶴ちゃんの髪のにおい、わざと嗅ごうとするオッサンがいたらどうしよう。  おれ、独占欲はいっちょまえなのに、なんでいつもこんなヘタクソなんだろ……。
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