44人が本棚に入れています
本棚に追加
ギリッギリにデスクに滑り込んで、ニヤついた先輩に「どうだった?」と聞かれる。
「いや〜。正直午前休考えましたよ〜」
おれもニヤついてテキトーに返すと、先輩方はそれぞれに「チャラいな〜」だの「腰落ち着けろよ〜」だのコメントして、仕事に取り掛かる。
あ、千葉くんにお昼奢ってあげなきゃねー。
千葉くんラーメン食べたいって言うんだけど、この辺のハイソなラーメン屋は並ぶのよ。そういうのは今度、夜に連れてってあげるから、町中華のラーメンでいい?って聞いて、いかにも昔ながらってとこにする。二組しか待ってないしね。
千葉くんは醤油ラーメン。それに味玉とチャーシューとメンマ全部付けてあげる。おれは天津飯。デートの報告するのはセクハラ?とか思って、ふつーに仕事の話する。
店の空気がざわついて、客の視線の先を追って、店内のテレビのニュースを見る。鍵荊災害発生。
「四ツ谷……?」
「近いな」
「でも処理済んでるよ」
なーんだ、みたいな空気になって、みんなそれぞれの食事に戻る。
「……永山さん」
「あ、ごめん」
「いや……処理班の人だったんですか?」
心配そうな声で、おれを見てくれる千葉くん。いい子だね。
「そそ。いや……四ツ谷って原宿支部の管轄?」
「いや、ごめんなさい、ぼくもそこまでは……」
「そうよね! 全然全然! ちょいスマホ触らせてー」
「もちろんです」
ネットで検索するけど、管轄エリアマップみたいのがあるわけじゃないんだね。たぶん機密情報。
波鶴ちゃんにLINEする。タクシー呼ばなくてごめんね、も言い忘れてたし。
綺麗な一夜の夢、になっちゃったらどうしよう……。
軍人さんを好きになるって、こういうことなんだ……。
最初のコメントを投稿しよう!