綺麗な夢、の裏はいつだってもどかしい

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 ギリッギリにデスクに滑り込んで、ニヤついた先輩に「どうだった?」と聞かれる。 「いや〜。正直午前休考えましたよ〜」  おれもニヤついてテキトーに返すと、先輩方はそれぞれに「チャラいな〜」だの「腰落ち着けろよ〜」だのコメントして、仕事に取り掛かる。  あ、千葉くんにお昼奢ってあげなきゃねー。  千葉くんラーメン食べたいって言うんだけど、この辺のハイソなラーメン屋は並ぶのよ。そういうのは今度、夜に連れてってあげるから、町中華のラーメンでいい?って聞いて、いかにも昔ながらってとこにする。二組しか待ってないしね。  千葉くんは醤油ラーメン。それに味玉とチャーシューとメンマ全部付けてあげる。おれは天津飯。デートの報告するのはセクハラ?とか思って、ふつーに仕事の話する。  店の空気がざわついて、客の視線の先を追って、店内のテレビのニュースを見る。鍵荊(カギバラ)災害発生。 「四ツ谷……?」 「近いな」 「でも処理済んでるよ」  なーんだ、みたいな空気になって、みんなそれぞれの食事に戻る。 「……永山さん」 「あ、ごめん」 「いや……処理班の人だったんですか?」  心配そうな声で、おれを見てくれる千葉くん。いい子だね。 「そそ。いや……四ツ谷って原宿支部の管轄?」 「いや、ごめんなさい、ぼくもそこまでは……」 「そうよね! 全然全然! ちょいスマホ触らせてー」 「もちろんです」  ネットで検索するけど、管轄エリアマップみたいのがあるわけじゃないんだね。たぶん機密情報。  波鶴ちゃんにLINEする。タクシー呼ばなくてごめんね、も言い忘れてたし。  綺麗な一夜の夢、になっちゃったらどうしよう……。  軍人さんを好きになるって、こういうことなんだ……。
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