16人が本棚に入れています
本棚に追加
珍しい! 触らせてよ! って言ったら触らせてくれるやつ。たぶん。触られて変な気持ちにならないのかな。
おれは触られて、いや水かきの存在を知らなかったし触ったことなかったし……ひゃっ!?ってなったし、くすぐったかったし、え、認めていいのかな……?
イケない気持ち、に、なりました……。
うーん……!! やむを得ん!! 認めよう!! おれは野矢が好きだし、そういう目で見てるよ〜〜〜!!
うん。で、それを前提として。おれは紳士だからやったらヤバいことはわきまえてますけど。やりませんけど。
でもさー!! 野矢のこと「ガチ」の目で見てて、拗らせまくりオーラ出してる奴にこれやったらヤバいって!!
わかってんの!? おモテになるんだから、それくらいの処世術はわきまえていただきたい!!
夜道は危ないから送ってあげたい!! 高校の奴らだけじゃなくて、通学路で汚ねぇオッサンに狙われたらどうしよう!?
なーんて言ったって、野矢は自転車で由緒ある住宅街へ。おれはバスに揺られて山奥へ。てんで違う方角に帰宅するわけですからねぇ……。
倉庫に用事あるから、って嘘ついて駐輪場まで着いていく。バスケ部の同期は適当に解散したらしい。164センチの野矢を見下ろす形。おれは伸びるの早くて170センチある。
「夜は冷えるな。6月なのに」
野矢は低めに結んでいた髪をほどく。長髪がストンと細い肩に落ちる。薄闇にも溶け込まないほどの漆黒で、わずかな西陽の暖色につやめいている。結び癖はついているけど見事な、重力に素直なストレートヘアで。
正直、綺麗すぎる。触ってみたいじゃん。
ンンン〜〜〜?? 男子高校生の性癖を、的確に踏み抜くスタンプラリーを攻略しようとしてるのかな??
そもそも野矢はだいぶそのスタンプラリーを進めちゃってるから。無自覚に。
近寄りがたそうに見えて、ノリがよくてお茶目ってので一つ。
堅物そうに見えて下ネタいけるタイプなのも、一つ押しちゃうよね。
少し親密度上げると、くしゃくしゃっとした笑顔を見せてくれるので一つ。
成績優秀で教養あるのも一つ。
東京出身の、伝統芸能の家のおぼっちゃんって響きで一つ。それゆえに滲み出るお育ちのよさで一つ。
性別不詳な容姿は、厨二を捨てきれない男子高校生によく効きますね。それも一つ押さざるをえない。
容姿までカウントし始めたらキリないからなぁ〜。
ここまで考えて、隣を見たら、野矢はいなかった。スタンプラリーのこと考えながら、上の空で駐輪場前で別れたんだったわ。だいぶバス停と逆側に歩いてきちゃったな〜。
最初のコメントを投稿しよう!