するりと灼き付ける

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 珍しい! 触らせてよ! って言ったら触らせてくれるやつ。たぶん。触られて変な気持ちにならないのかな。  おれは触られて、いや水かきの存在を知らなかったし触ったことなかったし……ひゃっ!?ってなったし、くすぐったかったし、え、認めていいのかな……?  イケない気持ち、に、なりました……。  うーん……!! やむを得ん!! 認めよう!! おれは野矢が好きだし、そういう目で見てるよ〜〜〜!!  うん。で、それを前提として。おれは紳士だからやったらヤバいことはわきまえてますけど。やりませんけど。  でもさー!! 野矢のこと「ガチ」の目で見てて、拗らせまくりオーラ出してる奴にこれやったらヤバいって!!  わかってんの!? おモテになるんだから、それくらいの処世術はわきまえていただきたい!!  夜道は危ないから送ってあげたい!!  高校の奴らだけじゃなくて、通学路で汚ねぇオッサンに狙われたらどうしよう!?  なーんて言ったって、野矢は自転車で由緒ある住宅街へ。おれはバスに揺られて山奥へ。てんで違う方角に帰宅するわけですからねぇ……。  倉庫に用事あるから、って嘘ついて駐輪場まで着いていく。バスケ部の同期は適当に解散したらしい。164センチの野矢を見下ろす形。おれは伸びるの早くて170センチある。 「夜は冷えるな。6月なのに」  野矢は低めに結んでいた髪をほどく。長髪がストンと細い肩に落ちる。薄闇にも溶け込まないほどの漆黒で、わずかな西陽の暖色につやめいている。結び癖はついているけど見事な、重力に素直なストレートヘアで。  正直、綺麗すぎる。触ってみたいじゃん。  ンンン〜〜〜?? 男子高校生の性癖を、的確に踏み抜くスタンプラリーを攻略しようとしてるのかな??  そもそも野矢はだいぶそのスタンプラリーを進めちゃってるから。無自覚に。  近寄りがたそうに見えて、ノリがよくてお茶目ってので一つ。  堅物そうに見えて下ネタいけるタイプなのも、一つ押しちゃうよね。  少し親密度上げると、くしゃくしゃっとした笑顔を見せてくれるので一つ。  成績優秀で教養あるのも一つ。  東京出身の、伝統芸能の家のおぼっちゃんって響きで一つ。それゆえに滲み出るお育ちのよさで一つ。  性別不詳な容姿は、厨二を捨てきれない男子高校生によく効きますね。それも一つ押さざるをえない。  容姿までカウントし始めたらキリないからなぁ〜。  ここまで考えて、隣を見たら、野矢はいなかった。スタンプラリーのこと考えながら、上の空で駐輪場前で別れたんだったわ。だいぶバス停と逆側に歩いてきちゃったな〜。
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