予言ごっこのうらおもて

2/4
前へ
/57ページ
次へ
 おれの交友関係を見渡したら、最もおモテになるのは野矢でした。本人に相談に乗ってもらおう。  いつもより1時間早いバスで高校に着いて、自習スペースに野矢を見つけた。 「おはよ。ね、いま、おれのお悩み相談に乗れるタイミング?」  小声で訊くときだって、顔近づけすぎたかなって、もうドギマギです。野矢は快く、おしゃべりOKな廊下のベンチに移動してくれた。いい奴だなー。  早朝の校舎はがらんとして、いやに音が響く感じがした。恋愛相談するにはちょっと恥ずかしいくらいに。 「ね、野矢はモテるじゃん」 「ああ」  野矢も小声で話すから、いつもよりすべやかな声質に聞こえて、たまんない。胸の高鳴りが止まらない。既にこの相談を後悔し始めてるけど、続けるしかない。 「野矢ほどじゃないけど、おれもモテ始めた気がする」 「おや。気づいたか」  野矢は可笑しそうに少し眉を上げる。嫉妬なんてしてないってことだよね。モヤモヤもしてなくて、野矢のおれに対する恋愛感情は今のところゼロ。  まあ、現状を把握するのは大事だし。野矢ルートを諦める要素にもなるし。 「デートに誘われちゃった。保留にしてる。野矢は興味ない子にデート誘われたら……突っぱねるのか」 「そうだな」  当たり前だ、という顔。今おれが誘っても突っぱねますよ、という顔……というのは考えすぎ。 「その理由を聞きにきた。誰でもよくはないの? 『恋人がいる状態』というステータスに憧れはないのー?」  野矢を好きになってから、安易に「彼女」とか言えなくなった。「恋人」って言う。特に本人の前では。彼氏になってほしい男の前では。 「なぜ、か。『恋人がいる状態』というステータス、か……」  しばし目線を宙に泳がせる野矢。  まずい。野矢が「恋人がいる状態」に興味を持ち始めてしまった。おれの迂闊な発言のせいで。その気になれば選び放題の野矢が! 「デートを重ねてから、魅力に気づくこともあるのだろうか。なら突っぱねるのは得策ではないな」  まずい! これはほんとにまずいですよ!!
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加