ストレートな心理テストにまっすぐな覚悟を添えて

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「野矢くん。突然ですが心理テストです」 「ほう」  予言に続き、懲りずにテキトー心理テストを宣言する。 「源氏物語で推すとしたら?」  旧家のおぼっちゃんだし、いけるのか? まだ授業では扱ってないけど……。 「明石(あかし)(かた)一択だな。教養があって聡明で。正直ほかの姫君は見えないが、ああ、花散里(はなちるさと)さんもいい。やはり教養というのは美質だ」  明石の方強火担でした!! おれもよー!! 「おれも! めっちゃわかる。明石さんにはしっかり叱られたいし、花散里さんとは素敵なレターセットでラブレター未満の文通から始めたい」  推し語りをしながら、惚れた男に教養アピールもできる。人生で初めて、あからさまな一石二鳥を体験してるわ、おれ。  野矢、めっちゃ笑ってる。 「明石さんは花柄よりも、シンプルな中にエンボスと金縁のレターセットを好みそうだ」 「……完全にわかるッ!!」  めっちゃくちゃふたりで笑う。あ、今クラスメイトに見られた。まいっかー。 「なんの心理テストなんだ。レターセットの話になってしまった」 「源氏物語の推しってさ……。好きなタイプがバレるよね」 「ああ。確かに。ずいぶんストレートな心理テストだな」  野矢は若干照れくさそうにニヤッと笑う。 「そういう心理テストでしたー! 教養に弱いんだ。めっちゃわかる。身の回りにいないの? 辻田は? いかにも文学青年じゃん」  うん。踏み出した。  やっぱり野矢が悲しい顔をしてるとき、おれに頼ってほしくて、おれ以外だったら嫌だから。
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