ストレートな心理テストにまっすぐな覚悟を添えて

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「永山は古典も読むのか。本を読むイメージはあったが」 「あー、現代語訳だけど」 「別に筋は同じなのだから同じことだ」 「そうね。古典、とか、いわゆる文豪、とか。物語を読むなら、今の常識と違う時代のが好き。違う常識の中を、種族としてはおれと全然変わんない人間が生きてるの、不思議でおもしろい」  ふふ、と野矢の含み笑い。なんかバカなこと言ったかな!?って焦って見たら、すっごく嬉しそうだった。 「私もそのように思う。大学ではシェイクスピアについて学びたいと思っている。時代背景は違うのに、私と同じ感情を持ち、同じく死を運命づけられた人間が生きているのはおもしろい。彼ら彼女らと私の感じる痛みは、同じだから」  ああ。自分のこと、話してくれた。嬉しい。おれと似た興味関心のこと、楽しそうに教えてくれた。 「永山は? 大学について」 「おれは……。きっかけから話すわ。おれの家は山奥で、近くに有名な心霊スポットがあるの。掲示板のランキングにも載るくらいの」 「へえ! そんな猛者がこの土地に控えていたとは」 「なにその言い方! とにかく、生まれたときから身近にあるし、確かに嫌な雰囲気だし行ったら出るかも、とは思う。おれはオカルト否定派じゃない。 それがきっかけでオカルトとか都市伝説とか好きなのよ。でも、近所に住んでるとなんでもないんですけど……?みたいな気持ちもある。 だから、人間ってなんで心霊スポットとか、オカルトとかが好きなんだろうって。近所すぎて冷めちゃってるけど、よその心霊スポットの話はおもしろくて熟読するの、興味深くない?」 「興味深いな。近所のは慣れてるからというのもおもしろい。何が人を惹きつけるのだろう」 「ね。だから、民俗学か文化人類学なのかなって」 「私もそう思う」  あっけなく肯定されて、びっくりした。民俗学と文化人類学って何をする学問なのか、おれもいまいちふわっとしたまま志望してるのに。 「祖父が民俗学者だったんだ」 「えっ!?」 「私の波鶴史(はづみ)という名前には『歴史』の『史』が入るのは、そこから来ている」 「へえー! いい由来! え、もしかして、おじいさんに進路相談できないかな?」 「ああ、すまない、祖父はもう逝去した」 「あ、お悔やみ申し上げます」 「ありがとう。だが、うちに来ないか? 蔵書はいくらでもある。入門書も2冊執筆しているし、借りていったらいいんだ。事典もあるから、『心霊スポット』の項がそもそもあるのか、引いてみたらいい。私も、人生が2回あったら民俗学を学びたいくらいなんだ」  すっごく嬉しそうに、いつもより早口でしゃべる。知的好奇心できらっきらの目。  ご、ご実家訪問、いいんですか……??
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