僕の歩いた街の風景

1/9
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 ハイティーンの僕は、たまたま出会った書物の影響もあって、国際情勢に強い関心のあった青少年だった。  未曾有の好景気に日本国中が酔いしれていた時代だ。  景気が良いときは、国民は政治から関心を失うとされている。だから政治家たちは、自分たちが国民から厳しく監視されないためにも景気対策には熱心なのかもしれない。  景気の立て直しがうまくいかない国の政府は、国外に敵を作ってそちらに国民の目を逸らせることを考える。  それによる戦争の火種や、その国の議会の保守革新の勢力争い、それに伴う国家指導者の交代劇に僕は心を奪われていた。  世界から見たら、実にちっぽけな日本という国の外の、しかも権力等の大いなるものに意識を振り向けることで僕も身の回りのことを軽視してみせて、心の安定を図っていたのだろう。  夢中になっていたときは、それがなぜだか分からなかったが、今ならそのことがよく分かる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!