異端弁護路

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 別に秋森は仕事がキライな訳ではない。そんなんじゃ優秀と呼ばれないから。  なので喜んだ秋森は自分の重たいバッグを持って「急ぎなさい!」と前島を待った。  数種の資料をまとめて前島が秋森を追いかけ車で事務所を離れる。 「以前に警備会社の社長の案件があったでしょう。その人からの連絡です」  運転をしながら今回の案件の説明を前島は始めた。いつもこんな風だ。 「あったねー。近所のヤンキーの脅迫に困ってたところ。お金も有ったし良いカモでもあったわい。また同じような案件だったら良いのにな!」  悪徳な笑い方が隣から聞こえて前島はため息をついたが気にしないで説明を続けた。 「今度は個人的な依頼でもあるそうです。実は娘さんのことをお願いできないかと」 「なんだ? 裁判になんのか」  ちょっと残念そうな秋森だが、裁判によらないで自分の思惑通りに進めるのが本人は楽しいだけ。 「なると思いますよ」  非常に退屈そうだった秋森は前島の言葉を聞いて目をキラリンと輝かせた。 「ほう! 楽しそうでないかい。最近本当に裁判なんて無かったから無罪でも勝ち取ろうか!」  カッカッカッと笑いながらの秋森なんて単なる冗談では有るのだが、前島の雰囲気は重い。 「有り得ませんよ」 「まじかよ」  さっきのトーンが嘘だったみたいに秋森が落ち着いた。  そして前島はストンと「その通りです」と呟いた。ハッキリ言わないその理由は秋森だから。  秋森は直ぐに不貞腐れた。 「つまんねー。あたしゃ帰るよ」 「残念ながら、秋森さんをご指名なので」  このくらいのことで前島はへこたれない。秋森が車のドアに手をかけようと車速を緩めることはなかった。 「帰りてー」  それからも散々前島に文句を言い目的地まで着いてもまだ秋森は駄々をこねている。 「病院嫌いの犬じゃないんですから、ちゃんと歩いて」  それは前島が秋森の腕を引っ張ているからでもある。実際似て非なるものだった。もしかしたら一緒なのかも。 「今回弁護の依頼を要請された秋森と申します。取り合えずはお話を聞かせてください」  明らかにさっき駐車場で前島を困らせていた人とはおもえない秋森に「営業スマイルは逸品なんだから」とサイレントで前島が言うのだが、その時にちゃんと聞かれて気づかれないように蹴られてしまった。 「こんちわ」
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