別れ

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別れ

 私は想像していた。  リョウマの受験がうまく行けば、3年間は学生になる。そして会社員になってから1人前になるのも、大体3年と言われている。  リョウマが学生の間は私が社会人として修行する時間で、リョウマが社会人として修行する期間には私はもう1人前。支えてあげられると思った。  そう考えると、結婚できるのは最短で二十代後半かな。子供が出来て職場復帰するのは30代半ばくらいになるだろうか。頭の中でそこまでシミュレート出来ていた。  でも、これは私の頭の中で繰り広げられていた議論であり、実際にリョウマと相談したりはしていなかった。受験勉強をしているリョウマの邪魔をしたくなかったし、私は自分の判断力に自信を持っていたから。  そしてあの日――。  私とリョウマの関係に亀裂が入った。  ある時、リョウマが嬉しそうにこう言ってきた。 「アンナ! 俺、就職決まったよ!」 「……は?」  話はこうだった。  私や周囲が就活を行い、内定を決めていく中で、徐々に夢を追うことに罪悪感が芽生え焦りが出てきた。そして私と早く結婚したかった。だから受験することをやめて、遅れた分ギアを上げて就活に励んでいた。 「俺、自分の夢が、アンナと結婚することだって気付いたんだ」 「……ふざ……けんな」  リョウマの話が嬉しくなかった訳ではない。  だけど、それ以上に悔しかった。 「なんで何も言ってくれないの!? 私は、リョウマのために、職場だって考えたし、リョウマの夢を一緒に叶えたくて、考えたのに……!」 「そうだったのか……ゴメン、でも、俺だってアンナを待たせたくなかったし、早くアンナと一緒になりたくて……!」  私は理解できなかった。  でもよく考えれば、あの日、4日間実家に帰るリョウマに焦りを覚えた私ならば、分かってあげられたはずのことだった。3年の間に私が会社で出会うまだ見ぬ人達。それに得も言われぬ恐怖を感じてしまったのだろう。  その時の私はそこまで頭が回らない。将来設計が音を立てて崩れてしまったことに混乱しているばかりだった。 「……ゴメン、無理。距離置かせて」  そう言うことしか、出来なかった。
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