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今いる道
聞いた話だと、私とそう変わらない時期にリョウマも結婚したらしい。
子供もいるのだという。幸せそうで良かった、なんて勝手に思ったりもしている。
そしてそのくせ、その子供が自分の子じゃないことに、ちょっとしたジェラシーも覚えてしまうのだから、私は馬鹿だ。
「――ママ、このほんよんでー」
アカネが私の方に向かって駆け寄ってくる。
そう、今の私を肯定してくれる存在、何よりも大切な娘。本当に大切なものに出会えたのだから、私の人生に間違いはない。
すると、アカネの身体がすっと宙に浮いた。
ケンタが抱き上げたのだ。
「アカネ、その本は、パパが読んであげよう!」
「ええ? いいのー?」
「いいのいいの、ほれ、行くぞー」
飛行機のように娘を抱いて蛇行するケンタ。するとふと私の方を振り返った。
「アンナ、顔疲れてるぞ。そこのコーヒー飲んでいいから、ちょっとゆっくりしろよ」
「え? あ、ありがとう」
予想外の言葉を残して、ケンタとアカネは楽しそうな声を響かせて、隣の部屋へと移動して行った。
――私の今いる道も悪くはない。
そう、感じさせてくれた。
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