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プロローグ:交差の果て
人間というのは車両のようなものであると思う。
そして人生というのは、それが走る道路のようなものだろう。
車体を形成していくのは自分だとしても、そのスペックは初めから定められていて初期装備を選ぶことは出来ない。
それなのに私たちは物心がつけば、既に自分が何らかの乗り物に揺られていることを知っているし、その乗り物が他者のそれとどう違うのかを自然と目測している。
その轍は舗装された高速道路に、はたまた未開の地の悪路に。
軌跡も走っている道そのものも、人それぞれであることを次第に理解する。
だが人間という生物は、そんな生来の環境にただただ翻弄される訳ではない。自分で舵を切り、理想とする方向へ少しでも近づかんとして走る。
その結果、平行で交わることの無かった他者の人生とも、交差することがあるのだと思う。
交わって別れ、走り、交わった先で角度を変える。
そしてその角度の先でまた交わって別れ、時に交わった先で同じ線を描く。
自然と交差する道、影響を受けて交差する道、どうしても平行な道。
交差した果て、その道の果て。
私たちの道は、どこかへ向かって最期の日まで続いていくのだろう。
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