Ⅰ 妹

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 呑気にハルに関心している私に対して、両親が今注目しているのは泣き疲れてお父さんの腕の中で眠っているハルではなく、魔法を使った私だった。暗がりでも私が何をしていたのか見えていたんだろう、二人は衝撃のあまり言葉を失っていた。  「ハルはこんなこと出来ないよ。だから...」  ハルは関係ない。そう言おうとした瞬間、お母さんが勢いよく腕を振り上げ、手のひらで私の頬をぶった。その勢いの余り私はそこに倒れ込んだ。  「二度と今みたいなことしないで。」  今までに聞いたことのないくらい低い声で、お母さんは言った。  「次やったら出ていってもらうから。わかった?」  そう私を睨む顔は今まで見た中で一番恐ろしい顔をしていた。恐怖のあまり固まる首を何とか動かし、私は頷いた。  「わかればいいのよ。」  怖い顔を緩めて優しく微笑んだお母さんはそう言って立ち上がった。  やっぱり受け入れて貰えなかった。  恐怖心と同時に、実の子をぶっても止めに入らなかった父親と本当の私を心の底から拒絶する母親へのショックを強く感じていた。
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