Ⅰ 妹

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 一連があってからというもの、両親は意外と以前と同じ態度で私と接した。相変わらずわがままの耐えないハルだが、あの時のように激しく荒れることは今の所ない。  お父さんもお母さんも、私たちがおかしい子だと実は薄々気づいていたのだろうか?知っていて気づかないふりをしていたのだろうか?二人とも普通に私たちを愛してくれるし、楽しく会話もする。でもみんなで出かけることは少ないから、もしかすると二人は私たちの力を知っているのかもしれない。ずっとそんな暮らしをしていたから何も疑問は湧かなかったが、一件があってからそう考えるようになった。危うく私たちが人前でその力を使ったら。とんでもないことになるだろうから。  そんなことを考える私と違って、まだ小さいハルには何も理解出来ない。だから最近、外に遊びにいきたいとよくねだるようになった。お父さんもお母さんも「今度ね」と話を流して、ハルの気をそらせるためにめいいっぱい家の中でハルと遊ぶことを繰り返していたが、それも長くは続かない。お外に行くよりもっと楽しいことを家の中でしようといつものように買い物帰りのお母さんがハルに言うと、ハルはまた嫌だとわがままを言った。  「陽ちゃん。お家の中も楽しいよ?お外暑い暑いだからね。」  夏の気温を言い訳にしても、ハルには通用しない。ハルは外に行きたいと駄々をこね始めた。  「陽ちゃん。お外に行くとしんどくなっちゃうからね。そうだ。陽ちゃんの大好きなビスケット買ってきたの。食べない?」  そう言いながら買い物袋からハルお気に入りのおやつをお母さんは取り出し、ハルに渡そうとした。  「やだ!!お外!!」  そんなお母さんの手をハルは払って、むすっとした顔でそう叫んだ。  「陽ちゃん。ママの言うこと聞いて?」  「やだ!!!」  「陽ちゃん。」  「やだ!!!お外行く!!!」
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