Ⅰ 妹

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 「わかった。じゃあハルだけ置いていくね。バイバイ。」  そう言って私は振り返ってお母さんにピッタリくっついた。  「帰ろ、お母さん。」  するとお母さんは私に合わせるように、そうだねと言ってきた道を戻り始めた。  「待ってよ!!!」  そう叫ぶハルの声が聞こえた。こうすればハルは追いかけてきて、一緒に家に帰ると言い出すはずだ。そう思っていた。  が、ハルがうぅともどかしそうな声を漏らした後言ったのは、私の予想を外したものだった。  「もういいもん!!」  そう言ってかけていく足音がした。その音は近づいてくるでなく、遠ざかっていったのだ。私は振り返った。ハルは私たちとは反対の方向に走っていったのだ。  「ハル!!!」  ハルの行先はT時路。悪い予感がした。私はハルを追いかけるように駆け出した。ハルが角に差し掛かる前に届けと願いながら。でもハルの足は早かった。ハルは私に捕まれる直前で角を曲がった。勢いで私も角を曲がった。私たちの目の前に迫ってきたもの。悪い予感は当たっていた。小さい私たちにとっては怪物のような大きい乗り物。夢中で走っていたハルはそれを避けることができない。もちろん私も、避けられない。止まらないそれと衝突する直前、私はハルの服を引っ張って引き寄せた。そしてハルとその怪物の間に入り、両腕を前に突き出した。とまれ。そう念じた。
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