Ⅰ 妹

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 気づくと私は道路の真ん中に立ちすくんでいた。目の前には車が止まっている。その車は正面から壁にぶつかったように前面が潰れていた。人だかりが駆け寄って来るけれど、何も聞こえない。一体何があったんだろう。  あ、そうだ。ハル。  私が見下ろすと、ハルは私のすぐ傍で大泣きしているのを見た。どこか怪我をしたのだろうか?しゃがんでハルを見回すが、どうやらそうではないらしい。  視線を感じ、見上げた。お母さんが人だかりの向こうで私をぼうっと見ている目と目が合った。その顔はまるで生気を失っていた。それを見て、私は思い出してしまった。  そうか。私、力を使ってしまったんだ。  さらに悪いことに、人の前で。  この潰れた車も私のせい。  ああ、やっちゃったな。  すると突然、目の前が真っ暗になった。暑さのせいか、日差しのせいか。力を使いすぎたせいなのか。理由はわからない。
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