Ⅰ 妹

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 目を覚ますと、外は真っ暗だった。私は今誰かに抱かれ、その肩で眠っていた。その人物が踏み歩く草や枝の音が響いている。この肩はお父さんのものだ。いつの間に帰ってたんだろう。  夢現でぼうっとしながら隣を見ると、お母さんがハルを抱きながら歩いているのが見えた。ハルもその肩で眠っている。ようやく静かになったらしいハルを見て安心したら、また眠くなってきた。多分、お父さんの腕の中が暖かいから余計だと思う。  しばらくそのまま微睡んでいると、突然お父さんが足を止めた。そして抱き抱えていた私をそっと下に下ろした。私が降ろされたのは固くて揺れる場所だった。更には水の音がする。ボートか何かの上だろうか?  そんなことを考えていると、今度はお母さんに抱かれていたハルが私の隣に降ろされた。ハルはどうやら熟睡している。夏なのにとても冷えるこの場所で身震いを起こしそうになると、今度は何か暖かいものが私たちの頭から足先まで覆うようにかけられた。風邪をひかないようにお母さんがきっと毛布を被せてくれたんだろう。やっぱりお母さんは優しいな。
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