Ⅰ 妹

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 「…ねえね?」  私の出した大きな声に起こされたらしいハルが私の肩で目を覚ました。はっとして見ると、寝ぼけ眼のハルが私を見ていた。  「ごめん、起こしちゃった?」  ハルはぼうっと私を見たまま頷いた。  「もうすぐ寝るところに着くからね。大丈夫だよ。」  お父さんとお母さんがいないこの恐ろしい現状に気づいてハルが泣き出してしまう前に、私は何でもないふりをする必要があった。だから私はあてもないが咄嗟にそう言って笑った。だがハルの目は誤魔化せない。いつもと違う場所にいることはすぐに気づいたようで、私に抱かれたままハルはキョロキョロと見渡した。  「お外!新しいお外だよ!木がいっぱいあるね!今日はもう遅いから、どこかで休んで明日いっぱい遊ぼうよ、ハル!」  ハルが怖いと思う前に、私は空元気でハルに言った。幸いにもハルは遊ぶという私の台詞に騙されて、緊張しながらもこくんと頷いた。これ以上歩き続けるのもハルをさらに覚醒させてしまうと思った私は近くにあった木の根元に駆け寄ってハルを下ろした。
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