Ⅰ 妹

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 酷い臭いで目が覚めた。鼻腔を掻き乱すその臭いは今までに嗅いだことのないものだった。目を開けると、隣にハルがいなかった。    「…ハル?」  一体どこにいったのだろうと寝ぼけ眼をこすりながら立ち上がってくるまっていた毛布から出た。霧は一層濃くなっていた。  「ハルー。」  私は辺りを見渡しながらハルの名前を呼んだ。返事はない。ハルのいた毛布はまだ暖かかったから、あそこを離れてそう時間は経っていないはずだ。つまりそんなに遠くには行っていない。  「ハ…」  もう一度ハルの名前を呼ぼうとした時、びちゃっという音と共に右足で何かを踏んでしまった感触を覚えた。足元をみる。ねちゃっとした液体がそこに広がっていた。赤黒いその液体はこの先に続いていた。それを追うように自然と私の目はその先を追った。
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