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「あ、そうだ。おじいさん、この辺で誰か見ませんでしたか?妹と両親と逸れてしまって。さっき起きたんだけど、いくら名前を呼んでも返事がなくて。ここから離れてしまったのかも。」
三人のことを思い出した私はおじいさんにそう聞くと、突然おじいさんの顔色が変わった。今まで優しく微笑んでいたその顔が、決まり悪そうな表情に変わったのだ。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「ジュンです。」
「そうか。ジュンちゃんか。いい名じゃのう。」
再び優しい顔に戻ったおじいさんは、言おうとしたことを一度飲み込んだように見えた。私が不思議そうにおじいさんを見ていると、おじいさんはまた眉間に皺を寄せた。
「実はな、ジュンちゃん。」
おじいさんはとても言いにくそうなことを言おうとしているように見えた。私は続きが気になるから、じっとおじいさんの方を見ていた。するとおじいさんは苦笑いを浮かべて、
「ジュンちゃんが寝ていた場所、実はわしの家なんじゃよ。よかったら何か食べるかい?」
と言った。そうか。おじいさんが家主で、きっと私たちに場所を貸してくれたんだ。そう考えた私はそういえばお腹が空いていることを思い出し、はい!と元気よく頷いて立ち上がった。もしかしたらさっきテーブルに置かれてたのって私のなのかなあなんてワクワクしながら、おじいさんと次郎と一緒にロッジに戻った。
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