II おじいさん

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 思った通り、テーブルのラップに包まれていたほかほかの料理は私のために作ってくれていたものだった。さっきは一瞬しか見なかったからそれが何かはわからなかったが、それはおじいさん手作りのふわふわオムライス、わかめと玉ねぎのスープだった。私自身お母さんの料理かスーパーのお惣菜しか食べたことがなく、どれも美味しくてすきだったのだが、おじいさんの料理もまた絶品だった。オムライスの卵はとろとろふわふわで、中のチキンライスを優しく包んでいる。チキンライスには細かく刻んだピーマンや玉ねぎが入っていたが、私は野菜も全般好きなのでどこをとっても美味しいと感じた。スープもおじいさんの手作りで、体の中心まであったまるようだった。今度料理教えてくれると約束したので、私はワクワクが止まらなかった。次郎も鶏肉が混ざったおじいさんお手製のご飯をそばですぐ完食して、私のご飯まで取ろうとしてきた。玉ねぎが入っているからだめだよとおじいさんに止められた次郎は不満そうだった。  おじいさんに聞いたのだが、次郎は柴犬と言う犬種らしい。黒い柴犬で黒柴とみんなはいうそうだ。そういえば私が寝ていた部屋に犬の写真が飾ってあったのを思い出しておじいさんに聞くと、あの子たちも歴代のおじいさんの犬らしく、みんな黒柴だったという。おじいさん曰く、一頭が老衰で亡くなると、しばらくしたら突然子犬の黒柴がおじいさんのもとに現れるらしい。それでおじいさんはどこの子かもわからないその子たちを育てては看取ってきたのだという。不思議なこともあるものだなと私は感心していたが、こんなに優しいおじいさんに世話をしてもらえるならきっとみんな幸せだっただろう。次郎も今とっても幸せなはずだ。
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