II おじいさん

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 「本当にすまない。わしがもっと早く二人に気づいていれば、あの子は助かったかもしれないのに。」  おじいさんはそう私に言った。私は首を横に振った。  「おじいさんのせいじゃないです。私が悪いんです。私がもっとしっかりハルを抱いていれば、ハルは一人で行かなかった。私がもっと早く起きていれば、ハルを助けられた。全部私のせい。私が…ハルを殺した。」  込み上げる感情に肩を振るわせていると、湯呑みを包んだままの私の手をおじいさんは掴んだ。君は悪くない。そう言っているようだった。  「二人って…お父さんとお母さんはいなかったですか?」  さっきおじいさんが言ったことが気になって聞くと、おじいさんはああと言った。  「いたのはジュンちゃんとハルちゃんだけじゃったよ。他の場所も探してみたが、おらんかった。どこに行ったかはわからんが、少なくとも二人は無事じゃろう。」  そう言われ、考えないようにしていたことが頭に浮かんだ。初めからおかしかったんだ。だってボートに乗せられた時、二人が乗ってきた感覚はなかったから。それにあんな真っ暗な林の中、私たちだけを置いてどこかにいくなんて、そんなことありえないだろうから。  二人は私たちを捨てたんだ。
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