II おじいさん

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 そう思った時、そうなるに至った経緯が思い出された。道路で起こったあの瞬間だ。  やっとお外に出られたと喜ぶハルだが、力を使ってしまわないか心配なお母さんはすぐに帰ろうと言い出した。だけどハルがいうことを聞くはずがない。だから私は考えて、ハルだけ置いていこうとした。そうすればハルはついてくるだろうと。だがハルは怒って全く逆の方に走っていってしまった。そんなハルを私はすぐに追いかけた。でも、追いつかなかった。道路に飛び出たときには既に遅かった。車に轢かれそうになったハルを助けるため、私は咄嗟に力を使ってしまったのだ。私が出した膨大なエネルギーは走ってきた車を無理やり正面から止めることが出来た。でもその車は壁にぶつかったように正面が潰れてしまった。そんな非現実的な光景を、近くにいた何人もの人が目にしてしまったのだ。もちろん、お母さんも。きっとお母さんは仕事から帰ったお父さんにすぐ話したに違いない。そしてもうお手上げだと二人意見が一致して、ハルと私をこの場所に捨てたのだ。きっと二人はハルにも力があると知っていたのだろう。でなければハルまで手放したりしない。だって普段は普通のお父さんとお母さんだったから。私たちを愛してくれていたはずだから。でも私が外で力を使ったせいで、お母さんとの約束を破ったせいで、こうなってしまったのだ。やっぱりハルが死んだのは私のせいだ。初めから、悪いのは私だった。死ぬべきだったのは私のほうだ。  そう思うと、私の目から大粒の涙が溢れ出てきた。生まれてまだ三年しか経っていないのに、あんな無惨な死に方をしたハルを思うといたたまれない。私が代わりに死ねばよかったのに。なぜ、私は生きてるんだろうか。なぜ、ハルが死んだのか。こんなのおかしい。絶対に間違ってる。
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