II おじいさん

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 「ジュンちゃん。」  私の手を握ったまま、嗚咽を漏らす私の名をおじいさんは優しく呼んだ。  「ハルちゃんが亡くなってしまったのはとても悲しいことじゃ。じゃがな、ジュンちゃんは生きておった。ジュンちゃんはまだ小さい。これから色んなことを経験するんじゃ。ハルちゃんの分も、いっぱい生きていくんじゃよ。ハルちゃんを忘れない限り、ハルちゃんはジュンちゃんの中で生きておるからの。」  私はおじいさんをみた。おじいさんは私の目をまっすぐにみていた。私の心の中を読んだんだろうか。なぜ今そんなことを言ったかはわからない。でもきっと私が出来るのは、ハルの分も生きていくことだけなのだろう。まだぐちゃぐちゃの心のまま、私はおじいさんの言葉に頷いた。おじいさんは微笑んだ。  
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