II おじいさん

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 「なあ、ジュンちゃん。ジュンちゃんがお父さんとお母さんに会いに行きたいのであれば、わしはそこまで無事に送り届けてあげることは出来る。じゃがもしそうでないのであれば、ここにずっといるのもいい。裕福ではないが飢えてしまう程わしも落ちぶれとらんからのう。育ち盛りのジュンちゃんを食べさせるだけの力はあるよ。」  何かを察したらしいおじいさんが突然そんなことを口にした。もうこれ以上両親に迷惑はかけられない。だからほんの少しの可能性を信じたとしても、もはや家に帰ることは私には出来ない。いっそこのまま得体の知れないこの地で、ハルが死んだこの場所で、死ぬまで生きることしかないのだろう。  「私には本当の家に帰ることが出来ません。なので、迷惑にならなければここにいたいです。」  全てを言わずそう答えると、おじいさんは何も聞かずに言った。  「迷惑になんかならない。いつまでもここにいていいんじゃぞ。」  一人ぼっちになった私にとってこの優しさは激しく心を揺さぶるものだった。大泣きしてしまいそうになりながら私はおじいさんに向かって今できる精一杯の微笑みを見せた。おじいさんは私に応えるように、にっこりと笑った。  
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