II おじいさん

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 私は世界でハルと二人きりだと思っていた。でもそれは、私が外の世界を知らないための思い込みだったことがたった今明らかになった。目の前で起こった不思議なことは、私ではなくこのおじいさんが起こしたことなのだ。  それに私はずっと、普通の人はしないことが出来るというのはおかしいことで、それは決して他の人に知られてはいけないと思っていた。でもおじいさんはあたかもそれは素晴らしいことだと言わんばかりの表情で私に一連を見せた。その顔は言っているようだった。この力は何一つおかしくはないと。  「ジュンちゃんのいた場所では御法度じゃったろう。じゃがここではその力を好きに使っていいんじゃぞ?」  その言葉は私が生きてきた中で一番と言っていいほど聞きたかった台詞だった。この力を表にすればお母さんが怒るから、いつも我慢をしていた。私の意思とは反対に、湧き上がってくるこの力を使いたくて仕方がなかったのだ。  「本当に…いいの?」  私は言った。するとおじいさんは優しく笑った。  「ああ。もちろんじゃ。」  この人は私を認めてくれる。おじいさんの返事で私はそう確信した。
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