Ⅰ 妹

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 舞い上がった気持ちですっかり忘れていたことを思い出し、私は再びハルに向き合った。もういっそのこと、それを確かめてやろうと思った。もし私の予想が正しければ、私はもう一人じゃなくなる。  私は近くにあったハルの大好きなぬいぐるみをハルから離れた場所に置いた。そして私はハルがそこまで歩いて行かないように座ったままのハルを後ろから捕まえた。もちろんハルは、そのぬいぐるみを取りたいために前のめりになる。ハルの引っ張る力に負けないように、私はしっかりハルを押さえ込んだ。するとハルは前に行こうとする力を弱め、右腕だけを前に伸ばしたままじっとそのぬいぐるみを見つめた。その途端、遠くにあったぬいぐるみがふわっと宙に浮き、ハルの方に向かって飛んできたのだ。そのぬいぐるみをハルは抱き止め、何事もなかったように大事そうにそれを抱えた。  やっぱり、ハルは私と同じだ。  ハルにも不思議な力が備わってるんだ。  ずっと疑問だったことが確信に変わった今、私は嬉しい反面これからどうしようという不安に駆られた。今ハルはこんな不安を抱えていない。つまり、いつ両親の前でその力を使うかわからない。もしバレてしまったら、ハルはどうなってしまうだろう。大好きなハルを奪われるのだけは絶対に嫌だ。  何があってもハルは私が守るんだと、その日私は誓った。
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