Ⅰ 妹

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 ハルが言葉を喋ったと、夕方帰宅したお母さんに報告すると、お母さんは驚いてママって言ってみてとハルに向かった。ハルは私の時と同じように、「マンマ」とすぐにいったため、お母さんはハルが歩いたのをみた時よりももっと喜んだ。夜お父さんが帰宅した時にはすでにハルは寝ていたので、お父さんはすごく寂しがっていたが、今度休みの時にパパを覚えさせようと意気込んでいた。  そう。これでいい。これ以上のサプライズはいらない。二人にとってはこれが一番の幸せなのだから、自分の子どもたちが気味の悪い忌子だったなんて知らなくていい。  楽しそうな二人を傍で見ながら、私はそう思っていた。  そうは言っても、自分の力に興味がないわけではない。本当はもっと色んなことを試してみたい。自分には何が出来て、何が出来ないのか。知らないだけできっと私にはもっと沢山のことが出来るはずだ。自分の力を使わずにいられない私は、幸いハルと家で二人きりになることが多いのでハルと二人でその力を使って遊んだりしていた。もちろんその頃からハルには言い聞かせていた。  この力は絶対に他の人には見せないこと。  パパとママにも。  この力は特別だから、人に知られたら特別じゃなくなっちゃうなど訳のわからない言い訳を並べてハルに言い聞かせていた。それを繰り返し言っているとハルも段々わかってきたようで、両親の前ではグッと何かを堪えるそぶりを見せることが多くなった。
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