Ⅰ 妹

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 だが、事件は起きた。それは私が五歳、ハルが二歳の年だった。  ハルは二歳になってすぐに嫌と言うようになった。何に対しても嫌と言うので、両親共手を焼いていた。もちろん私もだ。遊ぼうと言っても、おやつを食べようと言っても、何を言っても嫌だと言われる。否定されたら仕方ないので、私は我慢をするしかなくなるけど、やっぱりちょっと不満な気持ちはあった。  そんなことが続いたある日の夜。寝る時間だとお母さんが言ってハルをベッドに促そうとするが、まだ起きていたいのかハルは嫌だと言って家の中を走り回った。お母さんはひどく疲れた顔でそんなハルを何とか捕まえようと追い回す。どこか腹が立っているようにも見えた。このままだとお母さんを怒らせてしまうと危惧した私もお母さんを手伝ってハルを捕まえようとした。なかなか捕まらないハルに手を焼いていると、仕舞いにはお父さんが帰ってきて一緒にハルを捕まえる騒動にまでなってしまった。  ようやくハルを捕まえたのはお父さんだった。机の下から飛び出たハルを捕まえあげ、寝るよと言いながら暴れるハルを無理やりベッドに連れて行こうとした。ハルは尚も泣き喚いている。いい加減にしてよとお母さんは後ろでぼやく。でも後は寝かしつけるだけだと、私もお父さんを手伝いに行こうとした時だった。
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