Ⅷ.西洋菊

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 八坂は何回目だよ、と言いたげに苦笑を浮かべながらチーズケーキを頬張る。  例の生配信は口を酸っぱくして「観ないでくれ」と頼んでいた。配信中、ずっと寝室に籠らせきりだったことは、今でも申し訳ないと思っている。 「良かった……」 「そんなに観られたくないですか?」 「だって。また臭いって言われるもん、絶対」  だってあんなの——、私が八坂くんを好きだって言ってるようなものじゃない。  火照る脳内で補足しながら口を尖らせる。彼はそんな補足を知る由もなく、口内へ広がる甘さに目を細めた。 「これ旨いですね。ファミレスなめてました」 「でしょ?今度食べに来てよ、私が働いてるときに」 「気が向いたら」  それ絶対に来ないでしょう。  応答を済ませてすぐさまデザートに戻る八坂へ口を尖らせる。とはいえ、機嫌は取り戻したらしいのでミッションクリアだ。 「ご馳走さま」  堪能している家主を置いて、先に立ち上がる。すると彼は「あ、小國さん」と何かを思い出したかのように引き留めた。大事そうにチマチマとケーキを減らしていく手元は、握ったフォークを浮かせていた。 「ん、なに?」 「実家に帰る予定とかありますか。……たとえば、来週末とかで」  来週末——?  先ほどまで甘さに酔いしれていたはずの表情は、すこし目を離した隙に精悍な面構えへと変貌していた。
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