Ⅷ.西洋菊

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 八坂の強張った表情を覗き込む。飛行機が怖い訳じゃあないよね?と勘繰りながら、私は再び背を凭れた。  北海道稚内市は札幌から三百キロ以上離れた日本最北の地であり、私の故郷である礼文島(れぶんとう)の経由地でもある。  礼文には空港が無いので、実家に帰るときにはいつも稚内か隣の利尻島(りしりとう)へ降り立ち、船で移動する手段をとっていた。それは今回も例外ではなく、夕方のフェリー便で島へ渡る予定だ。  ちなみに、彼の言っていた札幌と稚内を結ぶ『都市間バス』は片道六時間以上を要するので、無事に着陸できることを切に祈った。 「で、そろそろ教えてくれる? 撮る人ってどんな人?」 「もうすぐ分かるんだし、別にいいじゃないすか」 「そうだけどさぁ……」  機内で離陸を待つ間、アナウンスを小耳に口を窄める。その後すぐにプロペラが回りだしたので、私は両脇の肘掛けを握った。 「怖いんですか?」 「ちょっと苦手なだけ」 「飛行機が?」 「……乗用車以外、乗り物は苦手なの」  どうやら、本当に着くまで真相は分からなそうだ。と歯を噛み締める。  彼の言う“ついで”の用事とは、稚内での撮影に同席すること。私をリハビリとして撮っていた目的が明らかになるらしい。
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